第353回 梅雨の白 |
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| 「どの季節がすきですか?」と聞かれることがある。「どの季節も」と答える。やせ我慢半分。ほんと半分。 梅雨も決して嫌いではない。雨かあ、と言いながら雨もいいと思う。夏の猛暑のことを思うと涼しい。樹木や草花が生き生きしている。忘れていたカタツムリ君にも出会う。雨の日は家の前の川も音を立てて流れる。夏のチョロチョロとは違って水を茶色にし、下流へ走っていく。「俺は川だぞ、なめるなよ」。 雨が上がった夜、家の前を歩ってみた。梅雨のころの白い花の美しさを改めて知る。何と言ってもアジサイ。庭にも山にも咲いている。青も白も綺麗。垣根から顔出すカシワバアジサイもいい。ガクアジサイがまたいい。白のホタルブクロが群生している。その向こうにドクダミの白い十字架も群生。闇が進むと余計に白が浮かぶ。6月初旬に飛び始めたホタル、まだ数匹が飛んでいる。ヒナギクが通路に。見上げると、前庭の右手にヒメシャラの白い花が高い木に星のように咲く、でももう終盤だ。左手には常緑ヤマボウシの白い手裏剣(しゅりけん)が天空に咲く。白の泰山木(たいさんぼく)も芳香の白い花の開花の準備。遠くで「ホッホホッホー」とフクロウの声、近くで「ゲログェロ」とカエルさん。心落ち着く声。まるで白のミニ楽園。 6月27日、突然の梅雨明け宣言がなされた。梅雨への慕情は断ちなさいと言われたようで不服申し立てをしたい気持ち。人間界の乱調を押さえて「乱調の家元はこちらだ」と天空は言わんばかり。 |
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( 2025年7月7日朝日新聞掲載。2025年6月30日記) |
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| ★この原稿は、朝日新聞鳥取県版連載の『野の花あったか話』(徳永進)のオリジナル原稿を、サイト収蔵保存のため再録したものです。 |
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