７月２日、カナカナ蝉が里山の方で鳴いた。蝉は一足先に夏を始めた。10月の初旬まできっと汗だく。約100日間の猛暑との闘い。
６月末、総合病院から67歳の女性が転院になった。病状は末期。主治医が病院の救急車に同乗してきた。女医さんで当方の何人もの患者さんがお世話になった。「着きましたよ」と先生。患者さんは肺炎や腹膜炎を併発していて展転とされていた。「ここ分かるー？」と娘さん。小さい声で「ののはな」と患者さん。１年前にご主人がここで亡くなった。ご夫婦とも活けてある野の花が好きだった。
「苦しまないようにして欲しい」。カンファランスルームで３人の子たちと話す。「でも、少しでも長く生きて欲しい」「面会は出来ますか？総合病院では１人20分、重症だったので１人だけ宿泊許されました」。「ここは体調と体温がよければ面会も宿泊もOKです」と答え「でも、尽力しますが病状は限界です」と伝えた。その日のうちに鎮静剤を変更、展転が落ち着くのを目指した。付添い用のソファーを安定感のある大きいのに入れ替えた。鎮痛剤が効き始めたのは夜10時過ぎてから。皆、やれやれ。
翌朝訪室、ソファーに長女一人、かと思ったらクローゼットに布団を敷き、次男が寝てるのが見えた。「ドラえもんです、よく眠れました」。病室の花瓶には花が活けてあった。ボランティアさんの小さい紫陽花、看護師が採ってきた赤い山桃、患者さんが育てた白の桔梗。病室が和らぐ。唐突に「７月7日を目指しましょう」とぼく。戸惑い顔の子ら。
詰所に帰ると子らの書いた七夕に飾る短冊があった。「お母さんずーっと一緒♡喜美」「みんなが楽しい夢を見られますよう☆一平」 |
