県外で一人で療養していた女性、「弟夫婦が鳥取に帰っておいで、って言ってくれて」と初診時に話された。ふるさとはいい。何とも言えない懐かしさがある。数ヶ月後、「同居って、やっぱり難しいです。互いに気使っちゃって」。それが普通。「アパート借りることにしたんです」。やむを得まい。訪問看護と訪問診療で伺うことになった。駅裏のアパート。階段がきつい。３階に着くと息切れがする。ピンポーン。少し間があって、「ごめんなさい、どうぞどうぞ」。見晴らしがいい。ＪＲのホームが見える。真下にスタバコーヒー店が見える。
「いいですよここ。汽車が入ったり出たりするのが見えて」「あの店、お客さん来てますか？」「流行ってます。若い人が多い。高校生もたくさん。ボーイフレンド、ガールフレンド、ビジネスマン、色々。それ見るのが楽しみ。お年寄りも、皆生き生きしてる。見てると私も元気になる」。駅の近くなんて、１等地のいい物件、と称えると、「それに、近くにスーパーがあるでしょ。その隣りが市役所、徒歩３分」と笑う。
洗面、トイレ付きのユニットバスがあり、玄関込みの４畳半のワンルームにベッド一つ、机一つ、キッチンコーナー、冷蔵庫、洗濯機置き場と揃っている。５歩歩けば、目的地に辿り着く。「療養している身には最高の部屋」と満足そうな顔。
「あそこにケンタッキー、マクドナルドもその横、アメリカ資本にやられてるわ。あのビルの夜の灯りが北欧風で、夜もまた抜群なの」。朝一番の列車が４時半ごろ出発する。正面の闇の空が変わる。太陽が顔出す直前、東の空が水平に真赤になる。「それがすごいの、宇宙にいるみたい。毎日、飽きない」。ひと月35,000円のひと味違う免疫療法。 |
