よく聞かれる。「休み、ってあるんですか？」。「ある、ようなないような」。「ゴールデンウィークや正月は？」「うーん、ない」。「いつ寝るんですか？」「夜12時半から朝７時前」。「夜中に起きることは？」「トイレに１回は起きます」。「仕事がハードですが睡眠、それで十分ですか？」「亡くなった友人の精神科医の浜田晋は昼寝のすすめ、を書いて実践してました。30分寝れると一日持ちます」。「夜中に起こされることは？」「あります」。
「最近,夜中に起こされたことありますか？」「今月は多かった。４日前の夜中の３時、85才の肺がんの女性。海の近くの家で８ヵ月過ごされました」。「夜中の運転って恐くないですか？」「暗いしね。でも車は少ないから助かります。少し飛ばして」。「ドクターは何をするんですか？」「心肺蘇生はしません。大概、死は一目で分かりますから。家族と看護師とで別れの水で口唇(くちびる)を拭きます」。「水ですか？」「コーヒーや、ビールもあります。この日は紅茶。亡くなられた時刻を告げ、診療所に帰って死亡診断書を書きます」。「他には？」「おとといの朝５時は病棟でした。もう明るい。脳転移のある71才の女性。意識がなくなっても抗がん剤を切望していたご主人が手を取っていました。その肩に看護師が手を」。「２日連続ですか？」「いや昨日は、郊外の家で11ヵ月過ごした71才の女性が午前２時亡くなりました。肝転移が進行してからも娘や孫と何度も外食を楽しまれて。星１つ半、みたいな評価が面白かった。死を承知されて迷いがなかった」。「続きますね？」
「どうして夜中、起きれるんですか？」「えっと、使命というか罪滅ぼしというか、長年の癖(くせ)というか」。「はあっ？くせなんですかあ？」 |
