中国縦貫道を走ると山崎のインターチェンジがある。そこを下りると宍粟市というまちがある。この字、なかなか読めない。しそうし。その宍粟市の市役所の会議室で話しをした。
日本のどの地域でも在宅往診、訪問看護、訪問介護が広まりつつある。それに関連する話しを依頼されて参上した。地方の病院はどこも大変。兵庫県にもたくさんの病院があるが、合併して大きくなって生き残るのだそうだ。医師不足、看護師不足が主な理由。設備の整う病院に生まれ変わる。合併した病院の周辺の病院は苦しくなる。大きな赤字を背負う。宍粟市の公立病院は院長自ら、在宅でのがん患者さんを看取ることもあるそうだ。非がんの場合は開業の先生に紹介しやすいが、がん患者さんの場合はこれからです、とのこと。ぼくは自分の体験談のようなことをスライドを交え話し、講演を終えた。
「何か質問は？」と司会が言うと、珍しくすっと会場で手を上げる若い男の人がいた。「理学療法士です。リハビリ中に患者さんが、『わし、もう死にたいわ』とおっしゃって、適当にお茶を濁したんですが、こういう時、どう答えるのがいいでしょう？」
会場って恐い。質問の玉がズシンの重い。そんなん正しい答えって、ないよ。でも言えることはある。そんな言葉をこぼしていい空気、目の前の人柄、患者さんはそれを見分ける。医者や看護師さんや家族には言えないことが、ポツンと言える。「そう思われるんですか、大変ですよね」と返せれば、次の言葉をその人は紡いだかも知れないが、「お茶を濁す」のも一回はいいか、と思った。それより、その言葉を心に残していた理学療法士がいたこと、が嬉しかった。 |
