９月は台風がやたらに多かった。10月は21日、マグニチュード6.6の地震が鳥取県中部を襲った。落ち着かぬ秋。気温もなかなか下がらなかった。「暑さ寒さも彼岸まで」の先人の言葉も変更を余儀なくされた。「暑さ寒さも彼岸から一ヶ月先まで」。
10月の末の日曜日、裏山を歩いた。こちらも「熊に注意！」の看板。おちおち散歩などしている場合ではなさそうだ。タカノツメの黄色になった葉が山道に落ちていた。11月に入ると、山道がこの葉で黄色の絨毯に変わる。道を這う葉の間に、もう赤い実がついていた。冬いちご。時間って不思議。季節の移ろいって不思議。私たちが日々のことに追われ、あれやこれやとグチをこぼしている間に、地球は何の連絡もなく、非情なほどの正確さで、ゆっくりと、回っている。
頂上付近でアスファルト道に出た。歩いている人はいない。５時前なのに、もう赤い夕日。空の青が雲の合い間で鮮やか。遠くに白兎海岸の、あの岩礁が見えた。湖山池は鏡のよう。そばを流れる千代側も。県立病院が見える。老人施設も。
思い出す、湖山池のほとりの家に往診にいってたことを。老夫婦をやさしい娘夫婦が看病していた。老いたネコがいた。近くの家のガレージに黒のラブラドールがいて、いつも吠えられた。老夫婦は亡くなった。７年前。思い出す、千代川のほとりの高齢者住宅にいた人のことを。海辺の村での一人暮らしが難しくなり施設にきていた。２週間に一度、往診していた。この春、宝塚の娘さんが引き取り、引っ越した。上品な90才のおばあさん。どうしてるんだろう。
茶灰色に変色した朴の葉が道に散乱していた。日が暮れ、山道を下っていくと、木々の向こうに、赤と黄の葉が、うす闇の中にくっきり。
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