六月の最後の日曜日、ガソリンスタンドに寄る。リットルあたりの値段が高くなっている。「消費税が上がったんでぇ」と店主。「梅雨はうっとうしいね」「湿度がこたえますよ」。雨が降ったら降ったと文句を言い、降らなゃきゃ降らないで、農家が困る、と文句を言う。ガソリンスタンドの有り難いところは、気象についての文句を共感し、受容してくれてるところだろう。冬の大雪の苦情も、夏の猛暑、熱帯夜の苦情も、ガソリンスタンドの兄さんたち、文句も言わず肯定的に聞いてくれる。ただし、次の客がガソリンを入れにくると「はい、らっしゃーい」とそっちの方へ飛んで行くので、束の間の限定共感なんだけど。
その日の夜９時、裏山に登ってみた。明かりは全くない。闇の闇。毎年このころになるとこんな時間に登ってみる。グッー、ガサガサ、と猪に出喰わすことはある。いた、闇夜に光るホタル。「ポー、ポー」、ゆっくりと光るホタルは源氏ホタル。源氏は家の前の川の上にも出現する。例年10匹くらいなのに、今年は25匹くらいに増えていた。もしかしているかも、と思った。いた。「ポー」ではなくもっと短い点滅。「ポッポッポッ」と光る姫ホタルがいた。川辺りや、草の中、道、高い木々の中で光る。懐中電灯を消すと真暗闇になり、自然のイルミネーションのように光り輝く。もっと登ってみよう。そこには高い杉の木が林立していて、かつてはその下に冬いちごが群生していた。いちご道、と勝手に名付けていた。いた。高い木の方にも、谷の川の上にも、「ポッポッポッ」と短く点滅する姫ホタルが。今年は多い。まるでアニメのようだ。いや、イルミネーションもアニメも人工だ。人口減少の鳥取市内のついそこの裏山に、豊かな自然は、今も息づいてる、と感じた。
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